料理のサイエンスコラム vol.9
あなたの料理は、科学でもっとおいしくなる!
科学と料理のおいしい関係
「調理科学」は私の専門分野。
本を書いたり、料理教室や学校での指導をしています。
ブログでは、身近な料理で役立つサイエンスをご紹介します。
【生のにんじんがビタミンCを壊す!?】
にんじんは、栄養があるイメージなので、この表題に驚かれたかもしれません。
にんじんをスライサーで細切りにして、
せん切りにした野菜と混ぜてサラダにしたことはありませんか?
だいこんおろしに、にんじんのすりおろしも加えて、
もみじおろしにしていませんか?
「ちょっと待った~!」
にんじんには、ビタミンCを破壊する酵素が含まれています。
この酵素は、にんじんを生で料理するときに働くので要注意!
☆ ☆
ちなみに、にんじんにも、ビタミンCは含まれています。
でも、丸ごとのときには、
ビタミンCを破壊する酵素は、
ビタミンCと一緒ににんじんの細胞内にありながらも、全く働かないのです。
だから、ビタミンCは守られている。
それが、ひとたび、にんじんに包丁を入れると、
切り口の細胞が壊れて、空気中の酸素と触れます。
すると、酸素との出会いで、
ビタミンCを破壊する酵素は、急にスイッチが入ったように、
そこらにあるビタミンCを、どんどん酸化し始めて、その効力を失わせてしまうのです。
自身のビタミンCはもちろんのこと、
一緒に料理した他の野菜や果物のビタミンCまで壊してしまいます。
しかも、細かく切れば切るほど、
切るよりもおろすほうが、細胞が壊れるので、ビタミンCは減少します。
☆ ☆
ビタミンCの破壊を防ぐことはできないのか?
にんじんを加熱調理すれば、酵素ははたらきを失い、この反応は起こりません。
とはいえ、今度は、熱がビタミンCを壊してしまいます。
それに、生で食べたいってとき、ありますよね!
☆ ☆
それには 「酢」「レモン汁」が効果的です。
これらは、ビタミンCを破壊する酵素の働きを止めてくれます。
そう考えると、おせち料理の
紅白なます(大根とにんじんのせん切りの酢の物)って、
とても理にかなった調理法だと思いませんか?
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
「料理は科学で、もっとおいしくなる!」
食育(子供料理教室・講演)・調理科学・フードコーディネート
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コメント
はじめまして。ブログ・ホームページ拝見しました。
とても実生活に結びついた科学と食のつながりで、しかも素敵な料理ばかりで感動し、感銘を受けました。本当い尊敬いたします。
にんじんについて、もしよろしければ教えてください。
にんじんのペーストをつくっているのですが、みじん切りで火を通しても柔らかくなりません。逆に乱切りで煮たほうが柔らかくなる気がしています。(離乳食クラスではそう教わるそうです)もしよろしければ、その理由を教えていただけないでしょうか??
投稿: みせす | 2016年6月 2日 (木) 19時02分
みせす様
ホームページ、ブログをご覧いただけたとのこと、ありがとうございます。
にんじんのゆで方に、そんな違いがあったとは、子供2人の離乳食を手作りしてきましたが気付かなかったので、いい情報をありがとうございました。
ペクチン質の話になるのでしょうが、
調理科学会の過去の論文を調べてみましたが、そのヒントとなる研究発表もされていなかったことから、理論を構築するデータがなく、今お答えすることができません。
これから仕事をする中で、そのことにアンテナをはっておきますね。
これからもよろしくお願いいたします。
投稿: まきこ | 2016年6月 4日 (土) 05時46分