以前開催した「日本料理会食セミナー」について
昨日のブログで、イベントを開催するというご案内をしましたが、
このように、食のイベントを定期的に開催しております。
2007年2月には、
京都の料亭「繁なり」にて、
日本料理の会食セミナーをしました。
このときは、桃の節句がテーマ。
ひなまつりの節句料理を作っていただきました。
繁なりのご主人さんと私が講師となって、
・桃の節句の料理のいわれ、調理法
・会席料理の流れ
・会席料理のマナー
・春の器の紹介、盛り付け方
・雛飾り
などをお話しさせていただきました。
そして、白酒の飲み比べも!
白酒を日本ではじめて作ったのは、
東京の「豊島屋」というお店で、
その元祖の白酒が今も売っているので、お取り寄せしました。
比較したのは、甘酒です。
よく白酒=甘酒と思っている方がいらっしゃるのですが、
白酒と甘酒は、製法が次のように違うんですヨ。
・白酒…
蒸した餅米と米こうじをみりんまたは清酒・焼酎に混ぜて発酵させた後、1ヶ月ほど熟成させてすりつぶしたもの。アルコール分は10%前後、糖分などのエキス分が約45度。酒税法上ではリキュールに該当。
・甘酒…
製法1:米の粥やご飯に米こうじを混ぜ、50~60℃程度に保温し、1晩(10~12時間)程度かけて発酵させたもの。デンプンを糖化することで甘味を得る。アルコール分1%未満。古く「一夜酒(ひとよざけ)」と呼ばれたのはこの製法からきたもの。
製法2:酒のしぼりかすである酒粕(アルコール分7~8%)に砂糖や水、しょうがを加えて作ったもの。若干のアルコールを含む。
飲んでみると、白酒はとろ~りとして、芳醇な香りと、濃厚な甘さ。
特に、この豊島屋のものは、味が濃いように思います。
さて、お料理をご紹介します。
●鱒(ます)の白桃焼き
私が料理で一番感激したのは、
「ますの白桃焼き」
なぜかというと、はじめて聞いた料理だったからです。
この写真では見えずらいかもしれませんが、
ますの上に左は桃色、右は白色のメレンゲがのせて焼かれています。
左がおひなさま、右がおだいりさまを意味されているそうです。
なんて京都らしい!
右がおひなさま、左がおだいりさまというのになじみがある人のほうが多いのではないでしょうか。京都は逆なのです。
結婚式もそうですが、おひなさまも向かって右に女、左に男と決まっています。
ところが大正時代以前と、現代でも京都では、これが逆なのです。
この左右が入れ違ったのは昭和の始めでした。
昭和天皇の即位式で、欧米にならい左に天皇陛下、右に皇后陛下がお並びになったことから、当時の東京の人形組合がおひなさまの左右も決めたからです。
ところが京都だけは、大正以前の京都御所の天皇の並び方と同じく、右に男雛、左に女雛の位置を変えていません。
それがわかる料理だったので、その点にまず感動。
そして、ますの上のメレンゲには、なんと白酒が入っているのです。
いかにも、雛祭らしいですよね。
両脇の一寸豆は、桜橘を意味しているそうです。
深いですね~~。
翌日、何気なく、茶懐石の料理本を読んでいたら、3月の茶事のところに、
名前は違いましたが、このようなお料理がのっていました。
ますの上のメレンゲは、白いメレンゲの中央に桃色のメレンゲで色づけてある形でした。
たぶん、前日に繁なりさんでこの白桃焼を目にしていなかったら、そのページを見ても目にとまらなかったと思うのですが、ピピピピピ・・・と反応!
とても勉強になりました。
写真上の料理は、「赤貝の和え物」。
桃の節句の料理に、赤貝はつきものです。
唐草赤貝という、飾り切りが美しい。
写真下の料理は、「菱豆腐」。
菱餅をかたどって、よもぎ豆腐、ごま豆腐、うにがのっています。
料亭で作られたごま豆腐は、ごまの風味が生きていて、おいしいですね。
ごま豆腐は作るのが大変なんです。
弾力の強い生地を火にかけながら、練る作業は汗だくです。。
菱餅ですが、下から、緑、白、ピンクの順に重ねられていることが多いですが、
それには由来があるのです。
諸説ありますが、
緑=大地
白=雪
ピンク=桃の花 をあらわしているという説が一般的なのかな。
残雪の下には、緑の芽が息づきはじめ、ふと見上げると桃の花が咲いているという情景が目に浮かびます。
松花堂弁当です。
ぶりの漬け焼き(出世魚だから縁起がいいですね)
いいだこの煮物(子を持っている様を、子宝に恵まれるとかけているのかしら)
はなびらゆりね(桃の花)
だし巻き(繁なりの名物。箸を入れると、じわ~っとだし汁が。料亭のだし巻きは格別です)
などなど
若竹煮。
たけのことわかめは春の出会いものといわれ、定番!
わらびも添えて、さらに春らしく。
お造りは、おいしいに決まってます♪
春爛漫のちらし寿司です!
そして、定番の「はまぐりのお吸物」
ひな祭りにはハマグリのお吸い物を必ず作ります。
また、雛段に赤飯を添えるのに、はまぐりの殻に盛る地方もあります。二枚貝のはまぐりは、表と裏の殻がぴったりと合い、他の殻とは決して合わない。
このことから「二夫(にふ)に見(まみ)えず」ということで、妻の貞節のシンボルとされてきました。
江戸時代では嫁入りするとき、貝桶(かいおけ)を持参するのがしきたりで、
嫁ぎ家先の玄関に、まず貝桶を運び入れてから、花嫁が玄関の敷居をまたぐのです。
嫁(か)した限りは貞節を守りますという心意気だったそうです。
こういった風習は、貞操を女性の最高の徳とする儒教の影響ですね。
嫁取り婚の制度は、中国の風習を取り入れて、室町時代に定着したものだけに、儒教の影響力は強かったようです。
貝桶は貝あわせを入れる容器で、貝あわせの遊びは平安時代に貴族社会で盛んだったもの。
貝あわせとは、現在でいう神経衰弱のカード遊びですね。
はまぐりの殻は、ほかのはまぐりの殻と片方ずつ合わせても絶対合わないことから、はまぐりの殻をばらして神経衰弱ができたのです。
同じはまぐりの2つの殻に、同種の蒔絵を描いて、きれいに装飾したはまぐりは、芸術品です。
繁なりのご主人さんから、たくさん興味深いお話しをおうかがいできて、
おいしいお食事も堪能できて、
心が満たされた1日でした!
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